ただの日記

毎日が週末

2020/04/08

今日は、『しごとの思い出』について書こうと思う。

今の私は無職だが、その前は接客業をしていた。
お客様をゲストとしてもてなし、あらゆることを楽しんでもらい、最高の思い出を持ち帰ってもらうことが私の仕事だった。
私はこの仕事を始める前に、「ここを世界でいちばん楽しい場所にする」という目標を立てた。自分にとっても、お客様にとっても、世界でいちばん楽しい場所にしたかった。
そのためにまず、マニュアルを全て頭に叩き込んだ。私は臨機応変な対応が人よりも苦手だ。だからマニュアルを毎日読んで、せめてマニュアル通りの対応だけでも出来るようになろうと思った。それからじゃないと、臨機応変な対応なんて到底出来ないと思った。2~3ヶ月ほど掛けてマニュアルをほとんど頭に入れたあと、臨機応変な対応は先輩を見て学ぶことにした。すぐに反応出来ないなら、それすらも自分の中でマニュアル化してやろうと頭から決めていた。私が常に持ち歩いていた手帳には、マニュアルに書かれている基本事項だけでなく、臨機応変さが求められる対応方法まで事細かに書かれていた。自分なりのマニュアルを作った。
次に、笑顔を絶やさないと決めた。この接客業をすることになったのは、端的に言えば家庭の事情により、という感じで、正直なところ、私が望んで就いた仕事では無い。そもそも私は極度の人見知りなので、初対面のお客様をもてなすなんていうことが出来るとは思わなかった。しかし、採用して頂いた以上、この恩を弊社に還元したいという気持ちは誰よりも強かった。人見知りで話し下手な私が、どうすればお客様を喜ばせることが出来るのか。笑顔だ、と直感的に思った。笑顔は人に移って、その人も笑顔にする事が出来る。気の利いたコメントやパフォーマンスが出せない分、人より多く笑っていよう、と心に決めた。実際に働いてみると、思ったよりもずっと楽しい仕事で、「意識して笑う」事よりも「楽しいから笑ってしまう」事の方が多かった。

と、ここまではあらかた周りにも伝えていた目標なのだが、私にはもう1つ野望があった。それは、私に会うために足を運んでくれるお客様、つまりリピーターを生むこと、だった。
私はずっとアイドルのオタクをしていて、アイドルに会うためにあちこちへ飛び回ったりしていた。会えるだけで嬉しくて、見えるだけで喜んだ。そしてそのアイドルという存在を、いつしか自分の職業と重ねるようになっていた。
私がしていた接客業は、常に不特定多数のお客様から見られ、その姿が弊社の姿になりうる仕事だ。いつも笑顔で楽しそうで、お客様に最高の思い出を作ってもらう、というところが私の中で被っていた。
リピーターになってもらうためには、弊社の魅力をとことん味わい、弊社そのものを好きになってもらう事が大事だ。では弊社の魅力を伝えるのは誰か。そして先述した通り、弊社の姿を体現すべきなのは誰か。私だと思った。
私を通して弊社を好きになってくれたら。
この野望が私の中で生まれた時、ずっとオタクをしてきてよかったと心底思った。アイドルがどんな風にしたら私たちが嬉しいか。自分がいちばんされて嬉しいことをお客様にもしよう、と思った。

そんなことを考えながら勤め始めて8ヶ月程が経った頃だった。なんと、私に会いに来てくれるお客様が出来たのだ。それも1組ではない。一気に数組だった。
生まれて初めて、この仕事をしていて良かったなと思った。人から認められたような気もした。こんな口下手でつまらない私なんかに、と思う反面、仕事上の私が上手くやれていたからこその成果だ、とも思った。
数組ともかなりの頻度で足を運んでくださって、本当に感謝でしか無かった。そして、より一層素敵な体験を作ってもらいたくて、私は接客業に磨きをかけるようになった。もてなすという事がどういう事か、日々考えて行動するようになり、それぞれのお客様に合わせた接客も出来るようになった。最初の頃に無理だと思っていた臨機応変な対応も、何とか出来るようになった。私は、あのお客様方のお陰で、かなり成長出来たと思う。

今でも、時折あのお客様たちを思い出す。あの方々の楽しい想い出の中に私が居るかもしれない、と思うと、涙が出るほど嬉しい気持ちになれる。私の中でも、紛れなく、楽しい想い出になっているからだ。

またいつか、どこかで会えたら。その時はきっと、心の底から笑い合える気がする。
まだまだ短い人生の中で、最も大きなしごとの思い出は、お客様によって成長出来たあの期間、である。

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by 株式会社Jizai「転職nendo」